大学受験に保護者はどのように関わっていけばいいのか、具体例から見ていきましょう。国立大学へ進学した息子を持つ福田明子さん(仮名)は、「共通テスト数日前のやりとりがなければ、合格はなかった」と振り返ります。
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息子は都内の中高一貫校に通っていました。スポーツやゲームなど、好きなことはとことん突き詰め、熱中する性格です。勉強は好きな教科であれば、それなりに集中して取り組みます。普段はそれでもいいのですが、全教科をまんべんなく網羅しなければならない受験期は、やはり親としてヒヤヒヤしました。
中学、高校とも好きな科目は数学と物理で、この2科目は学校の成績も、高1から通い始めた塾の成績も、比較的良かったと思います。一方、苦手科目の英語、国語、社会科は一夜漬けでギリギリ赤点を免れるかどうかという状態。学年順位が下から一桁ということも、何度かありました。
共通テスト数日前に決断 国立大学の後期日程への出願
そんな息子が受験勉強に本腰を入れ始めたのは、高3の春です。小さいころからロボットが好きだったため、学部は機械工学に絞り、第一志望は難関国立大学に決めたとのことでした(学校、学部選びは完全に本人に任せていました)。進学校だったこともあり、同級生は早くからエンジン全開で受験勉強に取り組んでいますから、「いくら何でも、実力をはるかに上回る国立大が第一希望とは」と内心、思いましたが、まずはやる気を出してくれただけでも一歩前進と受け止め、黙って見守っていました。
偏差値で余裕がある合格確実圏の大学は「受かったとしても行きたくない。行かないなら受ける意味がない」と言います。いかにも息子らしい考え方です。
大学受験は、あくまで息子の人生の一部。応援はしても口出しはしないと決めてはいたものの、大学入学共通テストの数日前になるとさすがに心配になりました。
「国立大学の前期日程しか受けないの? 後期日程で受けられる国立大学もあるんじゃないの?」と聞くと、「後期日程は共通テストで高得点じゃないと受からないよ。でも、一応見ておこうかな」と息子。第一志望の大学は、ほぼ2次試験の結果で合否が決まるため、共通テスト対策は二段階選抜に引っかからない程度にしかやっていないとのことでしたが、併願する私立大学の対策もあまりしておらず、自分でもこのままではまずいと思ったのかもしれません。
息子の気が変わらないうちに、親子でパソコンの前に座りました。まずは機械工学が学べて、かつ後期日程の入試を行う大学を受験情報サイトで検索し、そこから個々の大学のウェブサイトに飛んで、入試情報、ゼミの研究内容、学校の設備、クラブ活動、卒業後の進路などを比較しました。そして1時間ほどで後期日程に出願する別の国立大学を決めました。
続く不合格に憔悴 「後期は受けない」
そして迎えた本番。共通テストではなんとか二段階選抜の基準をクリアして安心したのもつかの間、私立大学は全敗。その悪循環を断ち切れないまま、第一志望の国立大学は不合格になりました。予想していたとはいえ「不合格」の3文字が放つ負のオーラは絶大です。後期日程に出願はしたものの、息子が「もう後期日程は受けないで浪人する」と言い出したときも、驚きはありませんでした。
むしろ驚いたのは、後期日程の前夜、友だちとの外出から戻った息子が「やっぱり明日の試験を受けることにした」と言い出したことです。その日会っていたのは、小学校時代からの親友。何があって心変わりしたのかは定かではありませんが、中学時代からレスリングに打ち込み、スポーツ推薦で大学進学を決めた親友の言葉から、刺激を受けたのかもしれません。「受験票、どうしたっけ?」から始まり、大あわてで準備を終え、翌日はなんとか受験会場へ。息子の帰宅後は家族でささやかな慰労会を開き、そこで今年の受験は終了……のはずでした。
ついに手にした合格 浪人か進学か、親子で検討
合格発表日には高校の卒業式も、予備校の申し込みも終えており、当の本人は友だちと卒業旅行に出かけていました。発表時刻を過ぎても息子から何の連絡もないため、恐る恐る合否確認ページにアクセスすると、そこには初めて見る「合格」の文字が!
急いで息子に電話をかけたところ、返ってきたのは「え、ほんとに? ありがとう。でもオレ、浪人するわ」という言葉でした。
帰宅後に話を聞くと、息子は後期日程で合格した国立大学に不満があるわけではないけれど、もう1年、本気で頑張って、第一志望の大学を目指したいと思っているとのことでした。「もう少し早めに本気になってほしかった」という親の本音はさておき、夫を交えて3人で進学した場合と浪人した場合のメリット、デメリットをあげながら比較検討したり、周囲の友人に相談したりするうちに、息子の気持ちもだんだんと変化したようです。入学手続きの期日ギリギリになって「せっかく合格をもらったのだから、大学という新しい世界で頑張ることにする」と決断したことを私たちに告げるときには、迷いのないすっきりとした顔をしていました。
受からないと決めつけず 出願してよかった
というわけで、息子は晴れて大学生となりました。理工学部は課題が多く、夜遅くまで机に向かう日もありますが、友だちとスマホで情報交換をしながら大学生活を大いに楽しんでいます。そんな姿を見ると、あのとき「第一志望じゃないから」「どうせ受からないだろう」などと決めつけずに、国立大学の後期日程に出願する選択肢を示してあげられたことはよかったかな、と思います。
受験は最後まで何が起こるか分かりません。親からすれば、まるでジェットコースターに乗っているような日々でしたが、周りから客観的な視点でアドバイスを受け、最終的に自分で進路を決めた息子。最後に手にした合格も、途中の悔しい思いも、すべてがいい経験になったと思います。
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