大学トレンド2

NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者の牧野富太郎(1862〜1957年)。ドラマをきっかけに、牧野博士への関心が急上昇しています。注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおうと、大学でさまざまな取り組みが行われています。牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)

  • NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者の牧野富太郎
  • 牧野博士への関心が急上昇
  • 牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)
  • 注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおう

貴重な植物標本を特別公開 2

東京都立大学(東京都八王子市)の牧野標本館3

NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者の牧野富太郎(1862〜1957年)。これがマーカーの設定ドラマをきっかけに、牧野博士への関心が急上昇しています。注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおうと、大学でさまざまな取り組みが行われています。牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)

東京都立大学(東京都八王子市)の牧野標本館では、企画展「『日本の植物分類学の父』牧野富太郎が遺したもの」を別館のTMUギャラリーで開催しています(2023年9月30日まで)。

注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおうと、大学でさまざまな取り組みが行われています。牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)。注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおうと、大学でさまざまな取り組みが行われています。牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)

ポイントは4つ 5
  1. 大日本植物志(1900〜1911年)
  2. 未整理の標本(牧野標本)の寄贈
  3. 館所蔵の貴重な植物標本およそ60点
  4. 牧野博士による標本を初めて見た時
広大な校舎
広大な校舎が広がる風景に圧倒される

同大学では、牧野博士の没後、自宅に残された約40万枚にも及ぶ未整理の標本(牧野標本)の寄贈を受け、1958年に牧野標本館を設立しました。20年以上の歳月をかけて標本を整理し、重複分を除いた約16万点の「牧野標本」が標本庫に保管されています。

牧野博士の作製した貴重な標本2

企画展「『日本の植物分類学の父』牧野富太郎が遺したもの」を別館のTMUギャラリー3

現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」
現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」

牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられること3

牧野博士が山田と共同制作したモクレイシとオオヤマザクラの図版4

現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」

重複分を除いた約16万点の「牧野標本」が標本庫に保管2

大学教育でいちばん大事なのは、学問への情熱を伝えること4

『牧野日本植物図鑑』(北隆館)からの植物画とともに、学名を含む種名、花期、レア度、植物の特徴のほか、牧野博士と植物に関するエピソードも載っています。スマホを片手に植物園に出かけて、植物を撮影すると、牧野日本植物図鑑の植物図案が手元で確認できます。

東大受験で使ったノート(写真=篠塚ようこ)

普段、標本は一般公開されていませんが、今回の企画展では牧野博士が自ら採集したものを含め、同館所蔵の貴重な植物標本およそ60 点(展示物の入れ替えにより変更になる可能性があります)を公開しています。

1909年9月に牧野博士が採集したバナナの標本(写真=加藤夏子)

牧野博士の標本は絵画のよう

大学院理学研究科の村上哲明教授(64)は、次のように話します。

牧野先生の標本は、どれも絵画のようにきれいです。標本を自分で作ってみると、その手間暇がよくわかるのですが、これほどきれいに仕上がっているのは、完全に乾くまで何度も押し直しをして微調整しているからです。

標本を見ただけで、いかに情熱をもって丁寧に取り組んでいたのかがわかります。大学教育でいちばん大事なのは、学問への情熱を伝えることです」

現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」

いまでは都内から姿を消したと考えられるハナムグラの標本。1920年5月に東京・渋谷で牧野博士が採集したもので、過去の都心部の環境を知る貴重な手がかりにも(写真=加藤夏子)

寄贈された牧野標本の中には、全国の植物愛好家たちから贈られたものも数多くありました。その数は牧野博士が採集したものよりも多かったと言います。

「牧野先生の功績の一つが、各地で観察会や標本採集会などを行って熱心に指導し、日本全国の植物愛好家たちとの関係性を築いたことです。いまでも私たち研究者は、植物愛好家たちの協力に助けられています。今後もそうした関係を大切にしていきたいですね」(村上教授)

うぐいす色のカバーに挟まれたものが寄贈された牧野標本。そのうち「M」の文字が記されているものが牧野博士自身で採集したもの(写真=加藤夏子)

村上教授が担当する植物系統分類学研究室の大学院生、山口万里花さん(23)は、牧野博士による標本を初めて見た時のことを次のように振り返ります。

「100年以上も前に作られた標本がこれほどきれいに、しかもたくさん残っていることに驚きました。標本を集めることが目的ではなく、その先の自分の研究や後世の人たちの研究に役立つように考えて作られていることも伝わってきて、植物そのものや植物学に丁寧に向き合っておられたことを実感しました。標本の量も質も大事にするところを私も見習いたいです」

精密な植物画を間近で

牧野博士は、精密な植物画を自ら描いたことでも知られています。
その細やかな筆致による植物画図版を間近で見られるのが、日本郵便と東京大学総合研究博物館が協働運営するミュージアム「インターメディアテク(IMT)」(東京・丸の内)です。同館では20年6月から「東大植物学と植物画 – 牧野富太郎と山田壽雄」と題したシリーズ展示を不定期で行っており、現在、シリーズ第4弾となる展示が開催されています(23年9月3日まで)。

特別公開「東大植物学と植物画 – 牧野富太郎と山田壽雄vol.4」展示風景 ©インターメディアテク/空間・展示デザイン © UMUT works

タイトルに名を連ねる山田壽雄 (1882〜1941年)は、牧野博士が信頼を寄せた植物画家の一人で、牧野博士の集大成ともいえる『牧野日本植物図鑑』(1940年、北隆館)に収載された図版の作画を共同で担当したことでも知られています。

今回の展示では、牧野博士が東京帝国大学で取り組んだ代表的な仕事の一つ、『大日本植物志』(1900〜1911年)を取り上げています。『大日本植物志』は、牧野博士が単独で編集を担当し、東京帝国大学理科大学植物学教室が編纂、東京帝国大学から刊行された出版物です。

展示会では、そこに掲載された図版の中から、牧野博士が山田と共同制作したモクレイシとオオヤマザクラの図版4点が並びます。植物の全体像だけではなく、葉や花の拡大図や部分図、生殖器官の解剖図などが極細の線で丁寧に描き込まれ、牧野博士の植物に対する深い愛情と情熱が感じられます

『大日本植物志』第1巻第4集(東京大学総合研究博物館所蔵)から ©インターメディアテク/空間・展示デザイン © UMUT works

アプリでゆかりの植物をコレクション

展示会場まで足を運ぶのが難しいという人は、お手持ちのスマホで牧野博士ゆかりの植物に触れてみてはいかがでしょうか。千葉工業大学の人工知能・ソフトウェア技術研究センター「STAIR Lab(ステアラボ)」は、高知県立牧野植物園と出版社の北隆館と協力し、植物コレクションアプリ「牧野100コレ」(動作環境iOS 14以上)を23年5月にリリースしました。

アプリの起動画面(写真提供=千葉工業大学)

アプリには、高知県立牧野植物園の監修でセレクトされた牧野博士ゆかりの植物100種を収録しています。『牧野日本植物図鑑』(北隆館)からの植物画とともに、学名を含む種名、花期、レア度、植物の特徴のほか、牧野博士と植物に関するエピソードも載っています。スマホを片手に植物園に出かけて、植物を撮影すると、牧野日本植物図鑑の植物図案が手元で確認できます。

ステアラボでは、AI(人工知能)による画像認識技術の精度を高め、花の種類を判別する「ハナノナ」を開発しました。この技術で、792種類の花の認識ができるようになりました。
各植物の紹介ページには、自分で撮影した写真を追加することも可能です。各地の植物園を巡って、自分だけの図鑑づくりを楽しむこともできます。

撮影した写真をアプリ経由で送信すると、STAIR Labが手掛けるAIアプリ「ハナノナ」(花の名前や種類を自動判定する)の開発にも役立てられます(写真提供=千葉工業大学)

いずれも入場料や利用料は無料というのもうれしいところ。牧野博士が標本などの形で残した植物に対する愛情と学問への情熱をぜひ味わってみてください。

(文=岩本恵美)

■大学トレンド

NHK連続テレビ小説「らんまん」のモデルとなった植物学者の牧野富太郎(1862〜1957年)。ドラマをきっかけに、牧野博士への関心が急上昇しています。注目を集める牧野博士のことを多くの人たちに知ってもらおうと、大学でさまざまな取り組みが行われています。牧野博士の作製した貴重な標本を見ることもできます。(写真=加藤夏子)

貴重な植物標本を特別公開

東京都立大学(東京都八王子市)の牧野標本館では、企画展「『日本の植物分類学の父』牧野富太郎が遺したもの」を別館のTMUギャラリーで開催しています(2023年9月30日まで)。

同大学では、牧野博士の没後、自宅に残された約40万枚にも及ぶ未整理の標本(牧野標本)の寄贈を受け、1958年に牧野標本館を設立しました。20年以上の歳月をかけて標本を整理し、重複分を除いた約16万点の「牧野標本」が標本庫に保管されています。

カビや乾燥を防ぐため、標本庫は常に室温20℃、湿度50%の環境を維持。いまでは牧野標本以外の標本も増え、約50万点を収蔵しています(写真=加藤夏子)

普段、標本は一般公開されていませんが、今回の企画展では牧野博士が自ら採集したものを含め、同館所蔵の貴重な植物標本およそ60 点(展示物の入れ替えにより変更になる可能性があります)を公開しています。

1909年9月に牧野博士が採集したバナナの標本(写真=加藤夏子)

牧野博士の標本は絵画のよう

大学院理学研究科の村上哲明教授(64)は、次のように話します。

牧野先生の標本は、どれも絵画のようにきれいです。標本を自分で作ってみると、その手間暇がよくわかるのですが、これほどきれいに仕上がっているのは、完全に乾くまで何度も押し直しをして微調整しているからです。

標本を見ただけで、いかに情熱をもって丁寧に取り組んでいたのかがわかります。大学教育でいちばん大事なのは、学問への情熱を伝えることです」

現代の植物学は、DNAを調査して、種の系統が解き明かされていきます。過去の知識は古くなり、技術も変わっていきます。それでも村上教授は、牧野標本の価値は変わることはないと言います。「牧野先生の標本を見る意義は、情熱が感じられることです。牧野先生の標本はそういう意味で教材としてもすばらしいと思います」

いまでは都内から姿を消したと考えられるハナムグラの標本。1920年5月に東京・渋谷で牧野博士が採集したもので、過去の都心部の環境を知る貴重な手がかりにも(写真=加藤夏子)

寄贈された牧野標本の中には、全国の植物愛好家たちから贈られたものも数多くありました。その数は牧野博士が採集したものよりも多かったと言います。

「牧野先生の功績の一つが、各地で観察会や標本採集会などを行って熱心に指導し、日本全国の植物愛好家たちとの関係性を築いたことです。いまでも私たち研究者は、植物愛好家たちの協力に助けられています。今後もそうした関係を大切にしていきたいですね」(村上教授)

うぐいす色のカバーに挟まれたものが寄贈された牧野標本。そのうち「M」の文字が記されているものが牧野博士自身で採集したもの(写真=加藤夏子)

村上教授が担当する植物系統分類学研究室の大学院生、山口万里花さん(23)は、牧野博士による標本を初めて見た時のことを次のように振り返ります。

「100年以上も前に作られた標本がこれほどきれいに、しかもたくさん残っていることに驚きました。標本を集めることが目的ではなく、その先の自分の研究や後世の人たちの研究に役立つように考えて作られていることも伝わってきて、植物そのものや植物学に丁寧に向き合っておられたことを実感しました。標本の量も質も大事にするところを私も見習いたいです」

精密な植物画を間近で

牧野博士は、精密な植物画を自ら描いたことでも知られています。
その細やかな筆致による植物画図版を間近で見られるのが、日本郵便と東京大学総合研究博物館が協働運営するミュージアム「インターメディアテク(IMT)」(東京・丸の内)です。同館では20年6月から「東大植物学と植物画 – 牧野富太郎と山田壽雄」と題したシリーズ展示を不定期で行っており、現在、シリーズ第4弾となる展示が開催されています(23年9月3日まで)。

特別公開「東大植物学と植物画 – 牧野富太郎と山田壽雄vol.4」展示風景 ©インターメディアテク/空間・展示デザイン © UMUT works

タイトルに名を連ねる山田壽雄 (1882〜1941年)は、牧野博士が信頼を寄せた植物画家の一人で、牧野博士の集大成ともいえる『牧野日本植物図鑑』(1940年、北隆館)に収載された図版の作画を共同で担当したことでも知られています。

今回の展示では、牧野博士が東京帝国大学で取り組んだ代表的な仕事の一つ、『大日本植物志』(1900〜1911年)を取り上げています。『大日本植物志』は、牧野博士が単独で編集を担当し、東京帝国大学理科大学植物学教室が編纂、東京帝国大学から刊行された出版物です。

展示会では、そこに掲載された図版の中から、牧野博士が山田と共同制作したモクレイシとオオヤマザクラの図版4点が並びます。植物の全体像だけではなく、葉や花の拡大図や部分図、生殖器官の解剖図などが極細の線で丁寧に描き込まれ、牧野博士の植物に対する深い愛情と情熱が感じられます

『大日本植物志』第1巻第4集(東京大学総合研究博物館所蔵)から ©インターメディアテク/空間・展示デザイン © UMUT works

アプリでゆかりの植物をコレクション

展示会場まで足を運ぶのが難しいという人は、お手持ちのスマホで牧野博士ゆかりの植物に触れてみてはいかがでしょうか。千葉工業大学の人工知能・ソフトウェア技術研究センター「STAIR Lab(ステアラボ)」は、高知県立牧野植物園と出版社の北隆館と協力し、植物コレクションアプリ「牧野100コレ」(動作環境iOS 14以上)を23年5月にリリースしました。

アプリの起動画面(写真提供=千葉工業大学)

アプリには、高知県立牧野植物園の監修でセレクトされた牧野博士ゆかりの植物100種を収録しています。『牧野日本植物図鑑』(北隆館)からの植物画とともに、学名を含む種名、花期、レア度、植物の特徴のほか、牧野博士と植物に関するエピソードも載っています。スマホを片手に植物園に出かけて、植物を撮影すると、牧野日本植物図鑑の植物図案が手元で確認できます。

ステアラボでは、AI(人工知能)による画像認識技術の精度を高め、花の種類を判別する「ハナノナ」を開発しました。この技術で、792種類の花の認識ができるようになりました。
各植物の紹介ページには、自分で撮影した写真を追加することも可能です。各地の植物園を巡って、自分だけの図鑑づくりを楽しむこともできます。

撮影した写真をアプリ経由で送信すると、STAIR Labが手掛けるAIアプリ「ハナノナ」(花の名前や種類を自動判定する)の開発にも役立てられます(写真提供=千葉工業大学)

いずれも入場料や利用料は無料というのもうれしいところ。牧野博士が標本などの形で残した植物に対する愛情と学問への情熱をぜひ味わってみてください。

(文=岩本恵美)

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2025.10.15-1
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